第31回 東海若手セラミスト懇話会
2005 年 夏期セミナー開催報告

東海若手セラミスト懇話会
日本セラミックス協会東海支部


日本セラミックス協会東海支部東海若手セラミスト懇話会の 2005 年夏期セミナーが、6 月 16 日(木)〜 17 日(金)の 2 日間、愛知県犬山市の犬山館で開催されました。今回は 114 名(学生 69 名、一般 45 名)の参加者を集め、招待講演 3 件、テーブルディスカッション 39 件(学生 31 件、一般 8 件)、学位論文紹介 2 件、海外報告 1 件の発表が行われました。以下、進行順に内容を報告いたします。


1 日目、6/16(木)13:25、定刻通り名古屋工業大学の井田運営委員長の挨拶により会が始まりました。引き続き、招待講演 1 として、(株)INAXの渡辺修先生より「古に学ぶナノテク材料−自律的湿度調節建材の開発」と題してお話しをいただきました(写真 1)。夏を涼しく過ごすために、先人たちの知恵によって生み出された土壁にヒントを得た調湿建材の開発の経緯とその性能について、詳しく御紹介いただきました。調湿特性がナノサイズを含めた気孔径の分布に大きく左右されるというお話は大変興味深く、また古に学ぶという内容は示唆的で、学生さんにとって大いに刺激になったのではないでしょうか。

続く招待講演 2 では、首都大学東京大学院の濱上寿一先生から「電気泳動法を用いたマテリアルプロセッシング」というタイトルでお話しをいただきました。電極配置や電気泳動セルの工夫、局所電場の制御などを施した多様な電気泳動プロセス技術について、粒子の分散・凝集を制御するための基礎科学から最新の研究成果まで、ビデオでの動画を織り交ぜながら、わかりやすくご講演いただきました。この分野の研究に興味を抱いた若手の研究者や学生さんも多かったのではないかと思われます。

夕食を兼ねた意見交換会では、美味しい川魚料理と飲み物に舌鼓を打ちつつ、至る所で会話に花が咲き、交流の輪ができていました。意見交換会は盛況のうちに中締めをむかえ,その後テーブルディスカッションが始まる 20 時 30 分までの自由時間には、会場前を流れる木曽川での鵜飼見物を楽しまれた参加者も多かったようです。

テーブルディスカッションは、39 件の発表を 4 グループに分け、コアタイムを設定する形で進められました。このテーブルディスカッションとはポスターセッションの変形版で、発表ポスター以外に資料その他の展示物をテーブル上に一緒に並べて発表できるようにした発表形式です。アルコール飲料を片手に進められたこともあり、分野や世代の垣根を越えた熱心な討論が 22 時 30 分まで続きました(写真 2)。なお、招待講演の講師の先生、井田運営委員長、及び一般参加者の投票により優秀賞 5 件が選ばれました。受賞者氏名、所属と発表題目は、本報告の最後に記したとおりです。熱心な議論や交流は、その後場所を移して催された二次会場でも、和気藹々とした雰囲気の中、3時過ぎまで続けられました。


2 日目は、名古屋大学大学院助教授の太田裕道先生による「透明酸化物半導体の高品質エピタキシャル薄膜成長と光電子デバイス」と題した招待講演 3 で始まりました。ご講演では、透明酸化物半導体を中心に、反応性固相エピタキシャル成長法をはじめとしたいくつかの高品質薄膜作製技術についてご紹介いただきました。ご講演では、薄膜としての酸化物の限界性能を引き出すために、とことんまで薄膜の高品質化を追求しなければならないという先生の強い信念が伺え、若手の研究者や学生さんには、おおいに勉強になったと思われます。

今回は新たな試みとして、各招待講演に対して 1 件ずつ、ベスト質問賞が設けられました。これは、学生の積極的な講演への参加を促すために考え出されたものですが、運営委員の思惑通り、講師の先生方がたじたじとなるような核心をついた鋭い質問が学生から飛ぶ場面が何度か見受けられました。

休憩をはさみ、学位論文紹介では日本特殊陶業(株)の溝口義人先生が「Spray-ICP法 によるFe系酸化物超微粒子および薄膜の合成と諸性質」,続いて(株)豊田中央研究所の板原浩先生が「Co系層状酸化物熱電材料の配向セラミックスのプロセス設計・合成」というタイトルで、研究成果を丁寧に説明して下さりました。学位取得に向けて大いに刺激を受けた学生さんも多かったのではないでしょうか。

次に、海外報告として、豊橋技術科学大学の片桐清文先生より、オーストラリアのメルボルン大学、Frank Caruso教授の研究室に、博士研究員として滞在されていた際の生活についてご報告していただきました。留学に至るまでの経緯、メルボルンでの生活の立ち上げで直面した多くの問題、ポスドクが研究の主力であるといった日本での研究環境との違いなどを詳しくご紹介いただきました。有益な情報が満載で、特に今後、海外留学を希望している若手の研究者や学生さんにとっては、おおいに参考になったのではないかと思われます。

最後に、昼食をとりながらテーブルディスカッション優秀賞とベスト質問賞の発表と表彰を行いました。特に、運営委員長賞を受賞した岐阜大学の石川君には、委員長が自らデザインを施した「ビバ!若セラTシャツ」が贈られ、会場はおおいに盛り上がりました(写真 3)。受賞された学生さんの喜びの声を聞きながら、秋期講演会での再会の約束をし、閉会しました。

例年、本セミナーでは、今年流行のクール・ビズ スタイルでの参加を呼びかけており、今回もそのリラックスした雰囲気の中で活発な討論が行われました。また、合宿形式ということもあり、東海地区の若手が和気藹々と親睦を深める良い機会となりました。この場をお借りして、次回にもより多くの方々のご参加を頂けますよう、ご案内する次第です。

なお、本セミナーの詳細は、東海若手セラミスト懇話会の公式Webサイトである http://www.atyc.org/ でも紹介しておりますので、一度、御覧下さい。


優秀発表賞受賞者(敬称略)
石川 宏樹(岐阜大)「ゾルゲル法で作製したジルコニアおよびハフニア膜の絶縁特性」
木村 正人(愛工大)「パルスCVI法による各種炭素化物へのシリコンコーティングと電気化学的特性」
黒澤 佳弘(名工大)「非晶質リン酸カルシウムに対するタンパク質吸着特性と細胞応答性」
田中 斉景(名工大)「La添加による酸化鉄-アルミナ触媒の耐熱性向上」」
水谷 篤史(名大)「NaxCoO2エピタキシャル薄膜のガラス基板への直接転写と評価」

ベスト質問賞受賞者(敬称略)
大野 一貴(名大)
羽生田 真英(名工大)
山岸 正生(名大)

written by 荒川修一(豊田工大)


写真(画像をクリックすると拡大表示されます。)

invited lecture
写真1 招待講演の様子
table discussion
写真2 テーブルディスカッションの様子
ceremony
写真3 授賞式の様子

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