第63回
日本セラミックス協会 東海支部

東海若手セラミスト懇話会
秋季講演会

 2022年10月7日(金)に名駅セミナーオフィスおよびZoomを利用したオンライン開催にて、第63回秋季講演会を開催いたしました。(共催:日本化学会、協力:日本セラミックス協会基礎科学部会)

 以下、進行順に内容を報告いたします。


 第63回 秋季講演会は、コロナ禍以来、初めてハイブリッド開催いたしました。招待講演2件および企業紹介1件を、名駅セミナーオフィスをオンサイト会場としてZoom配信し、参加者の皆様にはオンサイトまたはZoomにて聴講いただきました。両会場合わせて50名以上の方にご参加いただき、熱気あふれる講演会にできたことを、実行委員長として感謝申し上げます。

 招待講演1件目は、岐阜大学 准教授 入澤 寿平様より、「炭素繊維の基礎と炭素繊維が作る未来」と題してご講演いただきました(写真1)。入澤先生は、幼少時からテニスに親しまれ、テニスに関係のある仕事がしたいと切望されていたそうです。そして、東京工業大学塩谷研究室に配属され、高分子繊維と出会いました。2022年4月には、名古屋大学発ベンチャー企業(株)fff fortississimoを立ち上げ、テニスガットの開発・販売を始められています。まさに幼少期の夢を実現されていることになります。入澤先生は基礎研究も熱心に取り組まれ、炭素繊維を原料から作れる研究者は世界で入澤先生しかいません。しかしながらまだ炭素繊維が流通するにはいくつかの障壁画あります。たくさんの研究者や技術者を巻き込んだチームを作り、より高機能な炭素繊維開発に邁進されていく入澤先生の研究活動は、企業HPや岐阜大学で工場長を務めるFFF(Future Fiber Factory)で発信されていきますのでご覧ください。

 招待講演2件目は、九州工業大学 准教授の中村 仁 様より、「医用応用に向けた層状リン酸塩/ケイ酸塩の構造制御とIn Vitro評価」と題し、大きく三つのトピックス「層状ケイ酸カルシウムの有機修飾と化学的性質のin vitro評価」「層状リン酸ジルコニウムを用いた生体材料の創製」「炭酸カルシウムを用いた医用・環境浄化材料の創製」についてご講演いただきました(写真2)。これらの無機結晶は異方性を持つため、中村先生は有機物で結晶表面を修飾することで、溶出挙動や骨の再生速度を制御することができることを見出されました。一つ一つの実験が非常に緻密で、目には見えないスケールで行われていることですが、起こる現象を仮定し、それを実証して積み重ねていく研究スタイルにとても感銘を受けました。

 最後に、企業紹介として、(株)ジーシー 主席研究員 加藤克人氏より「歯科材料としてのセラミックス」について、製品や技術のご紹介をいただきました(写真3)。(株)ジーシーは、歯科材料及び関連機械・器具の製造販売を行っている、東京に本社を構える会社です。加藤氏は、名古屋工業大学 春日研究室のご出身で、歯科材料の研究が身近にありました。私たちが歯科医院に行くと、必ずといっていいほど、“GC”と書かれた機器が目に入るのでご存じの方は多いと思いますが、機器だけでなく、実際に歯に接着させる材料の開発・販売をされていますので、セラミックスに携わる学生さんにもなじみのある材料がたくさんあると思います。ぜひHPを覗いてみてください。

 本会の最後には、先に実施された2件の招待講演に対する学生参加者からの質問の中から、ご講演の先生方にベストディスカッション賞をそれぞれ1名ずつ選出していただき、表彰を行いました(写真4)。オンサイト・オンライン双方から積極的に多くの学生さんにご質問いただきました。受賞者の氏名と所属は、本報告の最後に記した通りです。

 ハイブリッド形式とはいえ、ほとんどの方がオンサイトで参加してくださり、会場は熱気にあふれていました。あいにくの雨模様でしたが、多くのご参加を賜り、大きな問題もなく盛況のうちに終えることができましたのも、講師の方々を始め、ご参加いただいた皆様、現地でサポートしてくださった東海若手セラミスト懇話会委員の皆様のご協力の賜物と、心より感謝申し上げます。なお、オンサイト会場におけるリモート配信は(株)WHITE FORM様、参加登録システムは(株)ブランドコンセプト様にお願いしました。


ベストディスカッション賞 (敬称略)

講演: 招待講演1 質問者: 棚橋 郁弥 大学: 名古屋工業大学
講演: 招待講演2 質問者: 吉田 祐生 大学: 名古屋工業大学

写真

招待講演1
岐阜大学 准教授 入澤寿平氏のご講演の様子

招待講演2
九州工業大学 准教授 中村仁氏のご講演の様子

企業紹介
(株)ジーシー 加藤克人氏の企業紹介の様子

受賞者
ベストディスカッション賞受賞の棚橋君(左)と吉田君(右)


文責:岐阜大学 高井千加


作成日時:2022年11月21日